第40回 実の輪模様がめじるし ナツハゼ

文:山下広行(森林インストラクター)  画:岸本文枝(ひょうご森のインストラクター)

 秋に入ったというものの紅葉の時期はまだずいぶん先ですが、夏のうちからハゼノキのように紅葉するということで名前がつけられた(と言われている)のがナツハゼです。確かにもう赤く色づいた葉っぱが見られますが、ハゼノキのような複葉ではなく、樹形もかなり異なることから、その名前のいわれは本当かなと思ってしまいます。
 ナツハゼは初夏に赤みを帯びた釣鐘型の小さな花をつけますが、それほど目立ちません。それよりもこの木を特徴付けているのは実の方でしょう。
 実は4~6mm程度の球形で、秋になると黒く熟し、甘酸っぱくて食べられます。それほど大きくなる木ではないので、山道を歩いていると丁度目の高さくらいのところに、木によっては鈴なりに実をつけているのに出会うことがあり、おいしい!というほどではないものの適度な酸っぱさが乾いた喉を潤してくれ、私は必ず摘んで食べます。
 実をよく見ると上部に輪状の模様があり、この模様からつけられたと思われる名前が、地域によって様々な呼び方でつけられています。なお、この輪模様は萼(がく)の痕です。
 輪模様を鉢巻と見立ててそのままハチマキ、そしてハチマキモモ、ハチマキブドウ、ハチマキイチゴなど。輪の上側を頭に見立てて、アタマハゲ、カシラハゲ、ハゲノキ、ハゲノミ、ハゲモモなど。もう一つは鍋などの蓋に見立てて、ナベノフタ、ブンブクチャガマ、ヤカンなど。そんな中で、チョロムケ、ムケッチョもあり、ヤマオトコやコオトコというのもたぶん同じ見かたでしょうが、詳しく書くのはやめておきます。ほかには、ヤマナスビ、キブドウ、カラスモモなどがあり、これらは食べることができて色が黒いことからつけられた名前でしょう。
 megumi40このようにいろいろな呼び方があることから全国各地で親しまれていた木だと思われますが、その割には植物のことを書いた本などにあまり取り上げられていないのは不思議です。それほど大きな木にはならず、花も目立たず、木そのものが利用されることが少なかったからでしょうか。
 ナツハゼは花崗岩質の日当たりのよい山地を好み私たちの活動地でも、雑木林の活動地ではどこでも見られると思います。実をたくさん採って、果実酒やジャムにしてみてはいかがでしょうか。最近はやりのブルーベリーのひとつですから目にいいかもしれませんよ。