第42回 アゲハチョウもその香りが好き? サンショウ

文:山下広行(森林インストラクター)  画:岸本文枝(ひょうご森のインストラクター)

今年は記録的な暖冬だったことから、木々の芽が開き始める時期も例年よりずいぶん早くなるだろうと思われます。
木々の芽が開くと言えば様々な山菜が楽しみですが、多くの地域で「木の芽」とはサンショウの若い葉っぱを指すようで、木の芽和えや木の芽田楽などがその 特有の香りを伴った春の味覚として私たちの舌を楽しませてくれます。サンショウの木を知らない方でも、葉っぱを揉んで匂いを嗅いでいただくと多くの方には それと分かっていただけるほど、日本人にはお馴染みの木です。
サンショウは「木の芽」としての若い葉っぱの利用のほか、やはり若葉や花、あるいはまだ固くない実を佃煮にしたり、また果皮を粉にしたものがそのままで、あるいは七味唐辛子のうちの“一”味のひとつであるなど、香辛料としても日本の料理に欠かせません。
サンショウが日本人にお馴染みなのは、例の「サンショは小粒でもぴりりと辛い」の言葉にもよると思われますが、この言葉のせいか「サンショ」なのか「サ ンショウ」なのかと聞かれることがあります。木の名前はサンショウ(山椒)ですが、「サンショウは小粒でも・・」では間延びしてぴりりとしないので「サン ショは・・」と縮めて言ってきたのでしょう。
サンショウは「北海道南部から九州まで普通に山野で見られる」と図鑑などでは書かれていますが、県下の森ではそれほどまとまって目にすることはありません。おそらく陽樹で、高木が生い茂って日当たりのよくない今の森では育ちにくいのでしょう。
サンショウの仲間にイヌザンショウ、カラスザンショウ、フユザンショウがあり、この中でイヌザンショウが葉っぱの形、大きさ等の点でサンショウとよく似 ていますが、サンショウと比べると香りがそれほどなく、実も利用されません。枝の棘のつき方の違い(サンショウ-対生、イヌザンショウ-互生)で区別でき ます。
棘と言えば、枝に棘がなく、その実が普通のサンショウより良品とされるのがアサクラザンショウですが、このアサクラとは本県の養父市八鹿町の朝倉のこと であり、朝倉で見つけられたことからつけられた名前です。図鑑や樹木のことを書いた本などでサンショウについて書かれた文章を読むと、このアサクラザン ショウと朝倉のことを取り上げた箇所が結構多く、同町出身の私としてはややうれしくあります。

sanshou ところで、サンショウなどミカンの仲間はアゲハチョウ類の食草であることをご存知の方も多いと思います。アゲハチョウがとまったサンショウの葉を見ると、小さな卵を見つけることがあります。
里山の整備では「明るく花が咲く森」づくりということが言われ、花が咲けば蜜を求めて蝶が寄ってくることも言われますが、蝶が舞う森を作るためには、そ の(幼虫の)食草である木や草を、花はそれほど目立たないものでも、そして棘がある木でも、残すことが必要です。