第46回 冬場にありがたいキノコ ヒラタケ

文・写真:辰己 正美(森林インストラクター)

冬に出会えるキノコは、年中見られる硬質菌以外は数が少ない。そんな季節に、ヒラタケは有り難いキノコである。
いくつかの図鑑の記述を要約すると、ヒラタケは晩秋から早春まで、雪が積もる中でも発生する。種々の広葉樹の枯木、まれに針葉樹の枯木にも発生、束に なって群生する。径は5~15cm、半円形~扇形で扁平に開く。若いうちは縁が内側に巻く。成長すると傘が開いて半円形になり縁が波打つようになる。表面 はねずみ色、褐色、類白色、青黒色等変化に富む。優秀な食用菌で栽培も盛んで、「しめじ」、「ひらたけ」で売られるが、野生の味には及ばない。西欧では、 オイスターマッシュルームの名で好まれる。毒キノコのツキヨタケと形が似ているので要注意(ツキヨタケは裂いてみると内部に黒色のしみがある)。いくつか の生物学的種からなるのではないかなどと。
12月に出版されたばかりの「兵庫のキノコ」(兵庫きのこ研究会著・編、神戸新聞総合出版センター)では、ヒダに粒がついたものはそこに線虫が発生して いるので食べないほうがいいと写真つきで説明がしてある。こんな記述は初めてだ。これまで長い間食べていたキノコで中毒に要注意(スギヒラタケ)とか、キ ノコについては新しい資料は大切だと思う。
さて、ヒラタケとはこれまであまり付き合いはないが、キノコ観察を始めたばかりの頃、冬に尼崎の雑木林の倒木にかなり大きな平たい形のキノコが群生していたと話すと、すぐにそれはヒラタケだろうと先輩のコメントを頂いた。今思うと確かにあれはヒラタケ。
昨年11月に私達山仕事の活動地の一つでヒラタケに遭遇。何十年にもなる立派な藤棚の幹にびっしりとヒラタケが密生。藤棚の部分は野外用のテーブルやイ スがセットされてくつろぐ場所である。私達はその場所を使うことがなかったので、これまで気づくことがなかったのだ。施設の職員は、「これはヒラタケに似 ているが多分違いますね」と私達に話しかけてきたので、「そうですね、判らないキノコには手を出さないほうがいいですね、私達が片付けておきます」と言っ て、すべての個体を採取して皆で持ち帰った。

megumi46 さてこの冬、待ち遠しくまだ出ないなあと11月頃から観察を続けていたが、ようやく12月の私たちの活動日に大きく成長していたが、半分ほどは無残にち ぎられて打ち捨てられていた。それも含めてきれいに洗ってその夜予定されていた山仕事の忘年会の鍋に利用させてもらうことに。とても丈夫なキノコである。
1月になって、量は少ないがまた新しい個体が発生(写真)。これはこれまでのような褐色ではなく若く黒っぽい色をしていた。しかも近くには米粒大の幼菌もある。まだ出そうだと春までの楽しみに。
さて、ヒラタケは枯木に発生というが、この藤の木のように老木になると一部で腐朽が進んでいるのだろう。薬剤を注入とかしてこの老木を助けるか、ヒラタ ケを楽しむか、私の知人でキノコにも精通し樹木医として活躍しているTさんだったらさてどうするのか、一度聞いてみたい気がする。