第49回 冬のサクラ花模様、白いマントのボタンヅル

文・写真:石川 恒夫(森林インストラクター)

粉雪のちらつく一月の休日、活動地に向う車のフロントガラス越しの山道は灰褐色がかった林縁の裸の落葉樹ばかりが目に付く単調な冬景色でした。その中に 白く明るく桜の花のようなアクセントが時折見えました。秋から冬に咲くフユザクラがあり、淡くややピンクのかかった白色の可憐な一重の花が丁度この時期に 家の近くで咲いていたのであまり深く考えずに、その仲間か或は温暖化で狂い咲きのウメかと思っていました。帰途も眼を凝らしたのですが雪も降っており車を 降りずに観察する横着さ故にサクラかウメかで納得でしたが、その時望遠で撮った写真を見て違いに気づきました。
よく晴れた数日後確かめに行きました。白い靄が青空に映えてまさしくサクラ模様、アカメガシワと思われる葉の落ちた木の枝のその白い靄を双眼鏡で見ると 綿状のものが視野に映りました。白い羽毛状の綿毛が周りを囲む風車みたいに付いた薄茶色種子の集まりで、花ではなく2~3cm程の塊、ボタンヅルの痩果 (そうか)でした。
ボタンヅルは花の美しいクレマチスやテッセンと同じキンポウゲ科の植物で、牧野の図鑑では「落葉つる低木」と記載され、花や葉が良く似たセンニンソウに 属します。仙人の「ひげ」の様な綿毛のある果実が特徴です。夏場には白い可憐な花がたくさん咲いていたのでしょうがテイカカズラかと思っていました。
周りに多いフジやクズのように茎を巻き付けるやり方でなく長い葉柄を木に絡ませ、この時も高いところでは10m以上のヤマザクラの樹上までを白い靄で 覆っており、クズよりも同じ仲間のセンニンソウよりも高く這い上がる能力があるようです。花は可憐ですが汁液は肌に炎症を起こすと言われており、キンポウ ゲ科に多い有毒な植物でもあり注意が必要です。
沿道の奥は人工林でスギやヒノキに絡まったボタンヅルは見当たらず、アオキやシダ類が見える暗い森でした。森を目隠しするようなカ
ーテンかマントの役目をボタンヅルのような植物群がしているようです。マント群落と呼ばれ林縁を覆って林内への風の吹き込みなどを抑え林内の温度・湿度を保つ働きがあると言われてます。

陽光を好む植物で関西ではヌルデ、クサギ、ハゼ、アカメガシワ、ムラサキシキブ、クズ、フジなどが挙げられます。林縁は林内とは日当たり、土壌の肥沃 さ、乾燥度合いなどが大きく異なることで違った植物が成育、餌になる木の実やねぐら等の提供も豊富ですので野鳥にとって大切な生活空間となっているようで す。
ツル植物は木々を痛める故に活動地では徐伐にもっぱらですが、林縁では又違ったケアが要るようです。寒い冬空の下、爛漫のサクラかと紛うボタンヅルの綿毛マントの中はもう暖かい春なのでしょうか。