第53回 新型インフルエンザにも効く? クリスマスの木 モミ

文:山下広行(森林インストラクター)

 クリスマスと言えばモミの木を思い浮かべる方も多いと思います。この樹が出身地の近くにはなかったことと、クリスマスが外国から入ってきた行事であることから、モミは外国の樹だと長く思っていましたが県内にも自生している樹であり、さらには県内に自生していると言うよりも、日本にしかない、つまり日本固有の樹です。
 その日本固有の樹がなぜクリスマスツリーに使われ、「モミの木、モミの木・・」とクリスマスに歌われるのでしょうか?
 クリスマスツリーの起源はドイツだということです。そのドイツでは元々タンネ(Tanne)-ヨーロッパモミが使われていたので、日本では仲間のモミが使われるようになったようであり、ドイツ人からすると、「ドイツではヨーロッパモミを使う」のではなく、「日本ではjapanische Tanneが使われる」ということになるのでしょう。「モミの木、モミの木・・」はドイツでは「O Tannenbaum, O Tannenbaum・・」と歌われます。
 ドイツでクリスマスツリーが飾られるようになったのは、キリスト教成立以前からドイツ人の祖先であるゲルマン人は、多くの木々が枯れ果てた厳寒の季節でも常緑を保っているタンネに力強さを感じて、あるいは崇拝の気持ちから冬の部屋の中に飾るなどの風習があったからということであり、日本で正月に松を飾ることに通じます。先の「もみの木」のドイツ語の歌詞は「おまえの葉はなんと緑だろう、夏だけではなく雪の降る冬でも青々としている・・」と続きます。
 さて、そのモミ。材は心材(中心近くの材)、辺材(周辺部の材)ともに白いこと、またほとんど匂いがない特性から、建材のほかにかまぼこ板、茶箱、素麺箱など食品に接するものに使われ、そのほかに古くから卒塔婆や棺(ひつぎ)などの各種葬祭具にも使われたようです。
 茶箱と棺と言えば、つい最近の某新聞の随想欄に、戦後間もない世の中全体が貧しい頃の話として、まだ生後間もない弟さんが亡くなり、子供用の棺が手に入らなかったので亡骸が茶箱に納められていたことから、その箱に書かれていた丸に囲まれた茶という字が最初に覚えた漢字だったという悲しい話が掲載されていました。もしかしたら、どなたか茶箱も棺もモミが使われていることをご存じだったのかもしれません。
megumi53 湿っぽい話になりましたが、最後にもうひとつ森のめぐみとしてのモミの話。ご存じのようにモミなどの針葉樹には私達をすがすがしい気分にしてくれるテルペ ン類が多く含まれており、これらは単に気分をすがすがしくしてくれるだけではなく、殺菌、抗ウィルスなどの働きがあるようです。日光(栃木県)のあたりで モミの樹液を湯に溶いて飲むと風邪など少しぐらいの病気はすぐに治った、ということを読んだことがありますので、新型インフルエンザに試してみるのもいいかもしれません。