第55回 シキミ(樒)なんとこの木からタミフルが

文・画:池上 由紀子

サカキ(榊)は神様へ、シキミ(樒)は仏様にお供えする木ですね。シキミも常緑であることから、かつてはサカキと同じように神聖な木“栄木”と云われていたそうです。
名前の由来は、果実が重なるようにして付くことから「重実(シゲミ・シキミ)」と言う説もありますが、それよりも「悪しき実(アシキミ)」の「あ」が取れてシキミとなったという説が一般的です。
悪しき実とは、この木の実には毒があることから。「毒物及び劇物取締法」という法律で唯一劇物に指定されている植物です。全木に毒がありますが、特に実の毒が強いそうです。
東北地方南部以南の本州、四国、九州、沖縄、台湾に自生し、春3月~4月頃に香りの良い白い花を咲かせ、実は9月頃に熟します。
防虫、防臭、殺菌等の効果が強いこの木の葉を、昔は土葬だったお墓のお供えにしていました(今もですが)。匂い消しや獣に荒らされないためと云われてい ます。またトイレが水洗でなかった時代に、家庭ではこの葉を使用して虫の発生を抑えたり、匂い消しとして使っていました。

ところで、昨年から新型インフルエンザの薬として有名になった“タミフル”の原料の成分は、なんとこの木の“シキミ酸”から最初に分離されたとのことで、毒も使い方一つで有益なものになることの証明ですね。

shikimi 話は変わり ますが、このシキミはかつて京で「花の木」と云われていました。若狭(福井県)から京へ通ずる街道は、若狭で獲れた鯖を京へ運ぶことに利用されたことから 通称鯖街道と呼ばれていますが、京へ鯖を運んだ人などが帰りにシキミを持ち帰るために街道沿いのシキミを手折ったということで、滋賀と京との県境に花折峠 と呼ばれた峠があります。現在でもその名前が残っていますが、今は幅広い国道に変貌しており、私は比較的空いているこの道を滋賀方面の帰りに利用していま す。
最後に、くれぐれもお願いします。この実は猛毒なので口に入れないようにしてくださいね。