第60回 森に住む青い赤トンボ ナニワトンボ

文・写真:佐藤 邦夫

皆さん赤とんぼの歌をご存じでしょうか?
♪赤とんぼ、赤とんぼの羽を取ったらあぶら虫♪ではなくて♪夕焼け小焼けの赤とんぼ、負われて見たのはいつの日か♪の童謡「赤とんぼ」のことです。たつの市出身の作詞家、三木露風の代表作の一つですが、この赤とんぼはアキアカネではないかと言われています。私はアキアカネが夕焼けの中飛翔するのは見たことがありませんが、北海道や東北では夕刻一定方向に飛んでいくアキアカネが見られるそうです。ちなみに、この歌が作られたのは北海道函館市とのことでした。アキアカネはかっては赤トンボの代名詞と言われるほど何処にでもいました。しかし、近年あれほどいたアキアカネがほとんど見られなくなった地域が続出しています。稲刈りの時期が早くなり、アキアカネの産卵時期とうまくマッチングしなくなったからだと言う説もあります。

さて、赤トンボの仲間であるアカネ属のトンボは、偶産種を含め兵庫県から18種類が知られています。今回紹介するナニワトンボもアカネ属のトンボで、主に瀬戸内海を囲む府県に分布していましたが、次々と産地が消滅し、比較的確実に見られるのは東播磨を中心とした兵庫県の瀬戸内側などわずかな地域になってしまいました。このため、環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類、兵庫県版レッドデータブック2003ではBランクになっています。アカネ属のトンボは、いずれも羽化したての頃は黄色っぽい色をしていますが、オスの大半の種類が成熟するに従い鮮やかな赤色になっていきます。その中で、ナニワトンボは唯一オスが青くなるアカネです。また、ナニワトンボに近いマダラナニワトンボはオスが黒くなります。こちらは、全国的な分布はナニワトンボより広いのですが、さらに珍しく、環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅰ類、兵庫県版レッドデータブック2003Aランクになっています。ナニワトンボは、池の周囲に樹木が覆い被さり、秋の水落しにより汀部分の土が露出しているような池に見られます。アカネ属のトンボは農耕文化と密接に関係した種類が多く、私たちにとってなじみ深いトンボと言えますが、農業形態の変化にともない里山と同じような運命をたどろうとしているように感じます。

高砂市の鹿嶋神社から高御位山一帯にかけては、近畿では兵庫県の瀬戸内側にしか見られなくなってしまったヒメヒカゲという湿地性のチョウがいるところです。この鹿嶋神社の近くにある市ノ池公園でもナニワトンボは見られます。ところが、今年1月に起きた山火事は120ha以上を焼き、一時は鹿嶋神社や高御位神社に迫る勢いを見せました。7月下旬、少し早いかなとは思いましたが、市ノ池公園のナニワトンボを訪ねてみました。公園の上の山肌は真っ黒に焼け、無惨な姿をさらしています。山腹の湧水湿地にいたヒメヒカゲのことが気にかかります。ナニワトンボのポイントに行くと、いました、いました。1頭だけですが、既に青くなったオスを見ることができました。写真を撮りながら、これからもナニワトンボとヒメヒカゲの産地が続いていくことを願わずにはいられませんでした。

今回は「森に住む青い赤トンボは播磨地方で主に見られる浪速トンボでした」という、何だかよくわからない話になってしまいました。