第67回 金・銀はあるが銅はない スイカズラ

文・写真:山下 広行

 初夏の里山では、白い花を咲かせる木々がたくさん見られます。緑が濃くなった森では虫たちには白い色が目立つからかもしれません。そんな中で、道端や林縁部を飾るひとつにスイカズラがあります。スイカズラはつる性の植物で、花を咲かせているあたりの細いつるを見ると草のようですが、木本植物、つまり木に分類されており、根元は結構太いものもあります。
 白い花と言いましたが、この花の特徴のひとつに、咲き初めこそ白ですが開花した翌日には(受粉したらとも言われます)黄色に変わることがあります。花は次々と開花することから、つる全体を見れば白と黄の花が混じって咲いています。色が白から黄に変わるから、あるいは白と黄の花が混じって咲くことから、黄を金色に、白を銀色に見立てて金銀花(きんぎんか)とも呼ばれています。
 スイカズラという名前の由来は「吸い葛」からというのが一般的な説で、筒状の花を引き抜いて、その付け根から甘い蜜を吸って遊んだことからこの名前がついたとされます。欧米ではスイカズラの近縁種にハニーサックル(honey suckle)と名前がついたものがありますが、やはり蜜を吸うという意味になります。蜜を吸える花は他にもあり、また特別に蜜をたくさん吸えるとか美味しいということでもないのに、同じ種類の花に日本でも海外でも似た名前がつけられているのは面白いですね。細長い筒状の形が吸うことを連想させるのかもしれません。
 ところで、スイカズラには金銀花という別名のほかに、もうひとつ忍冬(ニンドウ)という名前もあります。冬にも葉っぱを全部は落とさず、残った葉っぱも細く丸まっている状態が、いかにも冬の寒さを耐え忍んでいるように見えるからと言います。それにしても、この植物の標準名はニンドウではなくスイカズラなのに、そして科の名前(スイカズラ科)にもなっているのに、この仲間にはキダチニンドウとか、ハマニンドウが標準名になっているものがあり、植物の名前の付け方はどうなっているのかな-キダチスイカズラ、ハマスイカズラと呼ばないの?-と思ってしまいます。
 さて、金銀花、そして忍冬と言えば、生薬にこれらの名前があり、多くの漢方薬に使われているようですが、それぞれスイカズラの花の蕾、そして葉・茎を乾燥させたものです。健康には人一倍気を使い、自ら薬の調合も行っていたと聞くあの徳川家康もスイカズラを漬けた「忍冬酒」を愛飲していたと言われています。家康が当時としては長命だったのはスイカズラのおかげかもしれません。
 つる植物は木々の成長を害するものとしてそのほとんどは切る対象になりますが、薬効があることを知ったからには、切ったものもそのいくつかは利用してやりたいものです。風呂に入れれば肌にもよいとありますよ。

開花初日のスイカズラ

開花初日のスイカズラ

 
林縁を覆う白と黄のスイカズラ

林縁を覆う白と黄のスイカズラ