第70回 やはり野に置け「キンランとギンラン」

文・写真:森 逸男

 森の倶楽部の活動に参加していると、色々な生物に出会う楽しみがあります。春の終わりから初夏にかけて、里山でキンランやギンランに出会うこともその楽しみのひとつです。両方とも、その名のとおり「ラン科」の植物で「キンラン属」に分類されます。林内のやや日陰にひっそりと咲いていることが多いようです。花の大きさは、1cmにも満たない小さな花ですが、いずれも凛とした姿をしています。
 キンランは草丈が30~70cmほどになり、まっすぐに伸びた茎の先に数個から10個以上の、明るい黄色の花を咲かせます(写真-1)。花は卵形をしていて、上向きに開きます。花の中を覗くと、唇弁に赤い筋が見えることがあります。鮮やかな黄色から、「キンラン」と名付けられました。
 一方でギンランは小ぶりで、草丈は10~30cmほどですが、純白の清楚な花を数個から10個ほど咲かせます(写真―2)。花はやや上向きに付きますが、あまり大きくは開かず、花の先端と下側がややとがっています。黄色の「キンラン」に対して、花が白いことから「ギンラン」と名付けられました。
キンランが、輝くような若い男性的な姿をしているのに対し、ギンランは清楚な少女を連想させる初々しさを感じます。
 その姿に魅せられて、ついつい掘り取って家に持ち帰って自宅に植えたいと思う人も多いかもしれませんが、まず育てることは不可能です。キンランもギンランも、「菌根菌」と呼ばれる菌類が土の中にいる所でしか生きられないのです。

 かつては、どこの里山でも見られたそうですが、今は里山の手入れがされなくなったこともあって、最近は絶滅危惧種に指定されるほど、数が減ってきています。里山で出会っても、絶対に採取せずにそっと見守るだけにしてください。山野草は、「やはり野に置け」です。

写真-1 キンラン

写真-1 キンラン

写真-2 ギンラン

写真-2 ギンラン