第71回 ジャコウアゲハがなぜ姫路市・市蝶になったのでしょうか?

文:ジャコウアゲハが飛び交う街 姫路連絡協議会 三山 茂夫

 平成元年に姫路市は、市政百年を迎え「姫路市蝶」にジャコウアゲハを制定しました。それは次のような理由からです。

1.家紋が「揚羽蝶」である
 姫路市のシンボル姫路城には、築城主池田輝政の家紋である「揚羽蝶」の瓦紋が多数用いられています。「播磨人の美的感覚はすごいで。姫路城の屋根瓦で桐(きり)の樹海(じゅかい) の上を何千、何万もの揚羽蝶が乱舞しているところを表しとんのや。その向こうで鯱(しゃち)が跳ねとるのや。瀬戸内海の鯨(くじら)を見て造ったと思うで!」(瓦職人として国の選定技術保存者 / 故 小林 平一 氏 談)

2.さなぎがお菊さんの化身と言われている
 今から約450年前に、青山鉄山は町坪弾四郎と相談して姫路城を乗っ取ろうとしました。城主はその計画に気付き、お菊を鉄山の女中として住み込ませて、鉄山たちの様子をさぐらせていましたが、このことを弾四郎に気付かれ、家宝の皿を一枚隠してお菊のせいにしました。その皿を割ったぬれぎぬを着せられたお菊は、姫路城内の松の木に吊るされ、斬り殺されて井戸の中に投げ捨てられたのです。
 それから300年近くたって、城下に不気味な虫が発生しました。実はこの虫がジャコウアゲハの幼虫(さなぎ)なのです。さなぎの形が、後ろ手に縛られた「播州皿屋敷」のお菊さんの姿を連想させ、さらに口紅を付けたような赤い斑点があります。その形状からお菊さんの化身と言われ「お菊虫」と呼ばれているのです。
 一説によると「大正から昭和の始めにかけて姫路城を訪れた観光客に、お土産として一匹15銭で売られていた」と言われています。

3.幼虫が農作物を食害しない
 アゲハチョウの仲間でもナミアゲハやキアゲハ、クロアゲハなどの幼虫は、ミカンやサンショウ・ニンジンなどの農作物を食害しますが、ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサしか食べないので、果物や野菜などの農作物に害を及ぼすことは決してありません。
 幼虫の食草ウマノスズクサ 和名:馬の鈴草 学名:Aristolochia debilis
 ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属の多年生つる植物で、和名の由来は、葉の形が馬の顔に似ていて、花の球形の部分が馬の首に掛ける鈴に似ていることから命名されました。