第73回 人なつこい冬鳥 ジョウビタキ

文:森 逸男

 毎年、秋の気配が深まってくると、北の国から色々な野鳥が冬越しをするために、暖かい地方に渡ってきます。今回は、その中のジョウビタキについてご紹介します。

ジョウビタキ - スズメ目ヒタキ科 冬鳥  学名:Phoenicurus auroreus

 秋の訪れを感じさせるものとしては、植物ではヒガンバナの赤い花やキンモクセイの花の甘酸っぱい香りなどがあります。野鳥では、モズの高鳴きと並んでジョウビタキが姿を見せ始めるのも、秋の風物詩の代表です。
 ジョウビタキは、夏の間にチベットから中国東北部、ロシアの沿海州などで繁殖し、秋になると日本や中国南部、インドシナ半島北部などに渡ってきて越冬します。日本には、10月に入ると各地で姿を見せるようになります。
 体の大きさはスズメと同じくらいです。オスとメスで外観がかなり異なります。オスは頭の上側が明るい銀色で、顔と肩から背中が黒く、腹から腰の周りが鮮やかなオレンジ色です。黒い翼の中ほどに白くて目立つ斑紋があります(写真-1参照)。
 メスは全体に明るい褐色で、腰から先が明るいオレンジ色ですが、オスに比べるとかなり地味な姿です。翼はやや濃い褐色で、オスと同様に白い斑紋があります(写真-2参照)。
 このオス・メス共通の翼の白い斑紋を和服につけられた家紋に見立てて、「紋付鳥」という別名も付けられています。親しみを込めて「紋付さん」と呼ぶ人もいます。
 明るい林の中などを好む鳥で、里山周辺の民家の庭先や、街の中の公園などに姿を現わすこともあります。「ヒィー、ヒィー、ヒィー」と少し高い声で鳴きますが、「カツ、カツ、カツ」という何かをたたくような鳴き声を出すこともあります。この鳴き声が「火打石」を打つ音に聞こえることからヒタキ(火焚き)の名前の元になったとのことです。
 人に対してあまり警戒感を持たないようで、時には数メートルの近さまで近づいてくることもある、人なつこい野鳥です。森の倶楽部の活動地でも、姿を見せてくれる機会が多いと思います。見つけたら、「紋付さん、こんにちは」と声を掛けてやってください。