第75回 葉緑素を持たない野草「ギンリョウソウ」

文/写真:森 逸男

ギンリョウソウ (イチヤクソウ科ギンリョウソウ属 学名:Monotropastrum humile

 普通の植物は、葉や茎に葉緑素を持ち、太陽の光をもとに「光合成」によって空気中や水の中の二酸化炭素からでんぷんなどの有機物を作って、それをもとに成長します。しかし、中には葉緑素を持たず光合成をしない変わり者の植物もあります。その代表が「ギンリョウソウ」です。

 ギンリョウソウは、まるでガラス細工のように全体が透き通った白色で、地面から一本の茎が伸びてその先に花を1輪咲かせます(写真-1)。よく見ると、茎には退化して鱗状になった葉も見られます。しかし、この葉も含めてどこにも緑色の部分はありません。色がついているのは、花の中の「雌しべ」が青っぽい色をしているだけです。

 では、光合成をしないギンリョウソウは何を栄養にして成長するのでしょうか?

 ギンリョウソウは、森の林床に生えて「ベニタケ属」というキノコのなかまと一緒に「菌根」を作り、そのキノコが周りの樹木の根と「外菌根」を形成して、樹木が光合成をして作った有機物をもらって成長するとのことです。少しややこしいですが、樹木が作った栄養を、キノコを通して分けてもらって生きているのです。このような植物を「腐生植物」というそうです。

 ギンリョウソウの名前は、その花の形が竜の頭に似ていて全体が銀白色に見えることから「銀竜草」と名付けられたとされます。山林のやや暗い林床に生えることが多く、白い着物を着た痩せた女性がうつむき加減に立っているように見えることから、別名を「幽霊茸(ユウレイタケ)」とも言います。また、「スイショウラン(水晶蘭)」という優雅な別名もあるそうです。

 私が初めてこの植物を見たとき、最初は誰かが山の中にビニールの袋を捨てているのかと思いました。よく見たら、たくさん集まって生えているギンリョウソウの株でした(写真-2)。

 花期は5月から6月の初夏で、森の倶楽部の活動地でもあちこちでギンリョウソウが見られます。皆様もそのユニークで繊細な姿をぜひ観察してみてください。ただし、前述のとおりキノコと特殊な菌根を作って育ちますので、ギンリョウソウだけを掘り取って自宅に持ち帰っても、育てることはできませんので、申し添えます。

写真-1:ギンリョウソウ

写真-1:ギンリョウソウ

写真-2:たくさん集まって生えたギンリョウソウ

写真-2:たくさん集まって生えたギンリョウソウ