第79回 大きなおおきなテントウムシ ハラグロオオテントウ

文/写真:佐藤 邦夫    

 加古川の中流域に広がる丘陵地帯、新緑の季節を迎えた里山は様々な緑色に染め分けられます。農地と林との境付近、そんなところに1本のクワが残っていました。かつて養蚕が盛んであった頃に植えられた中国原産のマグワで、山地の渓谷沿いによく見られるヤマグワとは別の種類です。そのクワを見ていると、終わりかけの花と共に、オレンジ色をした大きなテントウムシが細い枝や葉の上をチョコチョコと歩き回っているのが見つかりました。1円玉より一回り小さいものの、なじみ深いナナホシテントウと比べると倍以上の大きさがあります。別の葉には真っ白な糸くずのようなものがついています。その傍にも大きなテントウムシがいて、体中白い糸くずまみれになっています。このテントウムシはハラグロオオテントウといい、よく似たオオテントウと共に日本に生息するテントウムシの中では最大級の種類です。両種とも南方系の種類で兵庫県からも記録されていますが、ハラグロオオテントウのほうが多いようで、私はオオテントウを県内では見たことがありません。兵庫県版レッドデータブック2012では「要注目」種となっています。名前の印象から何か性格が悪そうですが、そんなことではなく、ひっくり返すと腹や胸が黒いことからこの名前がついたようです。白い糸くずのようなものはクワキジラミの幼虫で、シラミのような姿(私は見たことがありません)をしているのでこの名前がついています。実際はシラミの仲間ではなくアブラムシやカイガラムシに近い仲間でクワの汁を吸っています。ハラグロオオテントウは成虫、幼虫共にこのクワキジラミの幼虫を食べることから、むしろ益虫と言っても良いでしょう。成虫は与えればアブラムシなども食べるようですが、幼虫が食べるかは定かではありません。
 マグワはかっての養蚕の名残として河川敷や里山林との境界、学校など公共施設の傍などで見られますが、東播磨ではどこにでもあるものではなく、あっても1本から数本のことが多いようです。運よく見つけることができれば、かなりの確率でハラグロオオテントウも見つかるでしょう。年配の方からは、子供の頃、赤黒く熟した実を学校の帰りによく食べたという話を聞きます。私も大人になってからこの実を食べたところ、口の中が真っ赤になりましたが、甘くてとても美味しいものでした。マグワは中国原産で日本の在来種ではないとはいえ、かって日本の農山村の経済を支えた功労植物であるのは間違いありません。ハラグロオオテントウと共にこれからも注目していきたいものです。

ハラグロオオテントウ

マグワの枝を歩くハラグロオオテントウ

 
クワキジラミ

葉裏にいるクワキジラミの幼虫