第81回 香る宝石か「へこきむし」か? キンカメムシの仲間

文/写真:佐藤 邦夫

 冬を目前にした秋晴れのある日、オオキンカメムシの集団越冬地で有名な高知県の室戸岬を訪れました。岬を望む展望台へ至る道をはじめ、あちこちにその集団を見ることができました。朱赤色に黒い模様がある大きなカメムシが常緑広葉樹の葉裏にひしめき、重さで枝先が垂れ下がる光景は目を見張るものでした。
 オオキンカメムシは兵庫県でも淡路島や瀬戸内海沿岸で見られ、それほど珍しいものではありません。飛翔力が強いので、内陸部でも見つかることがあります。県内でも海沿いの何処かでこのような光景が見られるに違いありません。県内にはオオキンカメムシを含めて3種の美しいキンカメムシが分布していますが、もう1種はアカスジキンカメムシです。フジやミズキなどの落葉広葉樹で見られ、県内に広く分布しています。終齢幼虫で越冬し、初夏に羽化するのでオオキンカメムシのような集団越冬は見られませんが、1本のカラスザンショウに多数の成虫が集まっているのを見たことがあります。金緑色の地に赤い筋模様があり、宝石に例える人もいるくらい美しいカメムシです。
 残りもう1種は、アカスジキンカメムシに良く似て、さらに美しいと言われるニシキキンカメムシですが、県内では数えるほどしか記録が無く、私も見たことがありません。

 集団越冬するオオキンカメムシ

集団越冬するオオキンカメムシ

 
アカスジキンカメムシ

アカスジキンカメムシ

 カメムシと聞いて誰もが思い浮かぶのは「へこき虫」とも呼ばれるように、強烈な臭いを放つことです。面白いことにこの臭い、幼虫時代は背中側にある臭腺の開口部から放たれますが、羽化して成虫になると背中側に翅ができるため、足の付根に臭腺の開口部が移ります。日本では悪臭の代名詞ですが、カメムシのことを中国では「椿象」と書きます。「椿」は香木として珍重されるセンダン科のチャンチン(香椿)からきたもので、「象」は「・・・の様な」という意味があり、つまり「チャンチンのような香りがする虫」を表しています。タイやベトナム料理などに添えられる香草のパクチー(コリアンダー)は別名カメムシ草で、その香りはカメムシそのものです。また、海外にはカメムシを食用にしている地域もあります。紹介した2種のキンカメムシは美しさも格別ですが、体が大きいこともあり匂いも格別なものがあります。果たしてそれは「臭い」でしょうか、それとも「匂い」でしょうか。私は「匂い」と思っています。
 ノーベル賞受賞者の中には、昔は昆虫少年だったという人がたくさんいます。私は昆虫少年のまま齢を重ね、気がつけば昆虫老人になっていました。森の倶楽部創設時からの会員です。