第86回 帰ってこいよ!! ウラナミアカシジミ

                                                                                  会員 佐藤 邦夫

 数年前のことですが、東北地方を中心にアカシジミというチョウが大発生しました。幼虫の食樹となるミズナラやカシワなどの落葉ナラ類の周辺は、オレンジ色の紙吹雪が舞っているようで、一種異様な光景だったそうです。大発生は数年続きましたが現在は落ち着いているということでした。

 兵庫県では大発生は起こりませんでしたが、それでも、例年より多くのアカシジミが見られた年がありました。クリの花を訪れている数頭のアカシジミを撮影していたところ、その中に黒い筋があるアカシジミによく似たチョウがいるのに気付きました。ウラナミアカシジミです。すぐに飛び立ち吸蜜している場面は撮れませんでしたが、近くの葉に止まったところを撮影することができました。

 ウラナミアカシジミは主に里山に生息し、以前は夕暮れ時に幼虫の食樹であるコナラやアベマキの梢付近を巡回するように渡り歩く(飛ぶ)オスをよく見かけたものです。しかし、いつの間にか姿を消し、今では兵庫県版レッドデータブック2012によると絶滅危惧Cランクになってしまいました。

 久しぶりの再会となりましたが、このあともいくつかの個体を見ることができました。メスは食樹の枝に産卵し、その上に尾端の毛を擦り付けて隠す習性があり、その場面も初めて見ることができました。その年以降、多くはありませんが、毎年姿を見かけるようになりました。オスは昼間樹木の見晴らしの良いところにじっと止まっています。撮影して数時間後、再び戻ってきても同じ場所、同じ格好でいたことには驚きました。緑の葉の上では結構目立つと思うのですが、鳥に襲われたりしないのでしょうか。止まっている姿を見ると、後翅の尾状突起が触覚となり、こちらが頭のように見えます。実際にアカシジミではこの部分が破損し無くなった古い個体をよく見かけます。後翅を犠牲にして、大切な頭の部分を守っているのかもしれません。

 近年、里山の環境が良くなってきたのか、姿を消していた生き物が戻ってきた話をよく聞きます。ウラナミアカシジミもそうであってほしいと願っています。